芸能の世界とプロレスの世界はあらゆる意味で似ています。

自分に実力があれば人気が出る、人気があれば売り出される。
そして何よりも入門者には冷たく残酷ですが、出て行く者には優しく温かいのです。

したがって引退をする人間が数年後に復帰する事は、しばしばあります。

今回ご紹介するダニエル・デイ・ルイスもそんな一人。

過去に引退をしたはずですが、その引退発言を撤回して現役復帰し、また引退をすると言われています。

しかし、おそらく数年後には復帰をしている可能性が高いと思われます。

俳優の紹介

1955年にロンドンで生まれた彼、父親は詩人という超文芸エリート一家の元で育ちました。

やがて成長すると共に、演技の世界を志すようになり、その後1971年に「日曜日は別れの時」にて映画デビューをしました。

しかし、映画よりも舞台を優先した彼は、舞台劇で主に活躍を遂げていきます。

その後1982年に映画界に戻ってきた彼は「マイ・ビューティフル・ランドレット」や「眺めのいい部屋」などの文芸映画にて出演。

着々と名声を浴びていきます。

やがて「存在の耐えられない軽さ」にてハリウッドデビューを果たし、その後も映画に出演をしていき「ラスト・オブ・モヒカン」で一気にスターダムに駆け上がって行きます。

しかし、そんな中1997年に制作された「ボクサー」を境に、いったん俳優としての活動を休止、なんと靴職人に転身します。

しかし、その後2002年に「ギャング・オブ・ニューヨーク」で俳優としての活動を再開して戻って来ましたが、昨年2017年「ファントム・スレッド」にて再び引退を決意します。

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代表作

彼の代表作はかなり多く、その中でも代表的なのはアカデミー賞を受賞した「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」で演じた悪徳石油王です。
この映画についてはベストワンで語らせていただきます。

古い映画が好きな、かなりのマニアであれば「エイジ・オブ・イノセンス」で演じたミシェル・ファイファーとの浮気に溺れていく会計士の男が印象的でしょう。

相手がミシェル・ファイファーなら仕方ないと言えば、仕方ないです。

ちなみに、この映画の奥さんを演じるのはウィノナ・ライダーなのですが・・・
彼女は現実でもグウィネス・パルトロウに彼氏を寝取られたり、オファーされていた役を取られたり散々な目に合っていますが、ここでも従姉妹に夫を取られるという悲惨な役柄を演じています。

さらに「父の祈りを」では、実在したテロ事件の容疑者となった男性を演じます。

まあ、この主人公が本当にどうしようもなく、こんな人間が本当にいたのかと呆れ顔になってきます。
そう思えて来るぐらい彼の演技は素晴らしく、この映画も面白いのです。

ちなみに彼は筋金入りの役者魂がある事で有名であり「父の祈りを」では、なんと独房で過ごし、スタッフに「俺の顔に水をぶっかけろ」と迫った事もあったそうです。

さらに「ボクサー」では元IRA闘士のボクサーを演じますが(ちなみに「父の祈りを」でもIRAが絡んでいます)、ここでもプロのボクサーと週3回スパーリングを行い、なんと鼻を折ってしまい、今でも鼻が曲がっているそうです。

役者バカでいえばクリスチャン・ベールよりも、ある意味では上かもしれません。

まさしく、そこまで削ってまで演技をする姿勢、彼にはプロレス魂がまさしくあるのですね。

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ダニエル・デイ・ルイスならこれを観ろ!おすすめ映画ベスト3!

1位: ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

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20世紀初頭のアメリカを舞台に、石油におのれの情熱をかける山師を描いた伝説の問題作です。

この映画で、彼は何と見事アカデミー賞を受賞しました。
ストーリーの内容は、実在した人物をモデルにしたとされる石油王の狂気に満ちた半生を描いております。

山師だった男が石油を掘っていくたびに段々狂っていく、狂気と愛情に飢えた本性を描く問題作で、隣で見ていたうちの母親は
「なんじゃこりゃ」
と顔をしかめていたのを覚えています。

ですが、面白くないという訳ではないんです。
むしろ彼の演技を見るなら、この映画が一番良いのです。

この映画における主人公は一種の感情移入不可能な、分かりやすく言えば怪獣的な存在として描かれているのが魅力的です。(なんと演技のモデルとしてドラキュラ伯爵を参考にしてるらしいです)

実はこの映画、石油王に対するライバルとして青年宗教家が登場しますが、ここでも彼のプロレスラーのごとき演技力は炸裂し、常にこの青年宗教家をボコボコにするのですが、ある場面で返り討ちをくらい、逆に屈辱を浴びせられてしまいます。(しかも、こいつの目的も半分以上金という嫌な奴です!)

そんな彼と対立しながら、突き進んでいく石油王の果てに待ってるのは何か?

こんなに栄光をつかんだ人間を待ってる先にあるのは何か、詳しくは言えないのですが、彼を待っているのは「空虚」なんですね。

ちなみに、この作品で演じた彼の演技はTotal Filmといわれるイギリスの映画雑誌の中で「最も記憶に残る演技ベスト200」の中で堂々の3位でした!

彼の演技を楽しみたい人がいるなら建前なしで、これをおすすめします。

2位: クルーシブル

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アメリカに実際に存在したといわれるセイラム魔女裁判をベースにした衝撃のサスペンス映画です。

1690年代のいまだに宗教の力が強かった(今もそうかも知れません)アメリカの田舎を舞台に、一人の少女の狂言から始まった恐怖の魔女裁判の顛末を描いた映画です。

この映画で彼は主人公となる権力者の男性を演じますが、これがまた酷い男性でウィノナ・ライダー扮するメイドと浮気をしていたのがバレてしまい、彼女を追い出した事で恨みを買い、ひょんな事から彼女に
「あいつは悪魔よ!」
と言われて、あわや死刑になってしまうという映画です。(簡単に言いましたが、とても一級の怖い映画として成立してます)

冷静に考えれば、嘘か偶然でしかないのに少女の発言を信じて、あれよあれよと罪なき人を殺していく、その姿はうすら寒いものがあります。

簡単に言ってしまえば所詮魔女裁判なんて、そんなもんなんです。

そして残念ながらアメリカは、このころから成長していません。
今現在アメリカあちこちでセクハラ炎上する騒動も、冷静になればこれと変わらない訳です。

結局その場に居た訳でも無いのに、SNSの情報だけを信じて炎上させたり相手の人生を破滅させる。

こういった愚かしい事は、いまだにアメリカで根強く残ってる訳です。(もちろん本当にされた事だって、あるとは思っています)

そして、恥ずかしながら日本でもそうですね。
男性なら誰でも恐れる言葉
「あの人、痴漢です!」
果たして本当に痴漢をしたのか分かっていないのに、その言葉だけで人生を台無しになってしまう。

これも、おかしな話で痴漢一つで人生破滅する訳が無いのです、ビビり過ぎちゃダメです。

とはいえ、現代のどこの国にも通じる恐ろしい映画なので、ぜひ皆さんも見てください。

3位:ギャング・オブ・ニューヨーク

ギャング・オブ・ニューヨーク(字幕版)

レオナルド・ディカプリオと共演した事で話題になりました。

19世紀初頭のアメリカ。
アメリカを夢見て移民して来たアイルランド系の愚連隊グループとアメリカで生まれ育った愚連隊グループ「ネイティブアメリカン」の間で衝突が起きます。

その結果、決闘が起きアイルランド系のリーダーが息子の前で殺されます。

しかし、息子は生きており「ネイティブアメリカン」のリーダーであるビル・ザ・ブッチャーへの復讐を遂げようと、虎視眈々とチャンスをうかがい成長していきます。

16年後、成長したアムステルダム(アイルランド系のリーダーの息子)は、ビル・ザ・ブッチャーの組織に素性を変えて潜入し、復讐の時を待ちますが、途中で正体がバレて追放されます。

おまけに仲間たちまで殺されていくアムステルダム。

彼は復讐を決意し、最後の戦いに挑んでいきます!
勝つのはブッチャーか!
アムステルダムか!
この映画で、彼は悪役のビル・ザ・ブッチャーを演じています。

しかし、ビルは悪役でありながら気骨があり、殺したアムステルダムの父の事を
「あいつは強かった!あいつと闘えたのは誇りだ!」
と称賛する武人的な性格があったり、アムステルダムの正体を密告した彼の友人を
「裏切り者は信用しない」
と言って逆に惨殺してしまうなど、どこかプライドがあります。

先にあげた二つの映画に比べて、良くも悪くも少年漫画風に制作された、この映画は非常に楽しく、見ていて面白い気分になる、という珍しい史劇映画ではあります。

ちなみに彼は主人公のレオナルド・ディカプリオを差し置いて、アカデミー賞主演男優賞にノミネートしています。

アムステルダムが勝つか、ビル・ザ・ブッチャーが勝つか。
まさに、これもプロレス的な見せ場です。

まさに彼は出てくる映画もプロレスに変えてしまう、という本当にすごい人なのですね。

吹き替えの玄田哲章さんの怪演も楽しいので、吹き替えをお勧めします。

ダニエル・デイ・ルイスでもこれは観るな!ワースト作品

リンカーン

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この映画でのダニエル・デイ・ルイスの演技は完璧なのですが、どーにも映画が地味で面白くありません。
しかも長いです。
150分延々と、いかにリンカーンは凄かったかを描いてもしょうもないでしょ?
となってきます。

確かに黒人解放の礎になったのは間違いないでしょうが、彼はインディアンへの迫害もそれ以上に行っていました。
(とはいえアメリカという国を発展して来たのは残念ながら白人なのです。それは現在でもそうです。)

この映画ではリンカーンを善人に描いていますが、果たしてそうなのでしょうか?

今一度彼の人生をもう一度見つめ直す。
そういうような映画が見たかったのですが、悪い事に監督は「賞狙い」状態のスティーヴン・スピルバーグ、こういう時のスピの映画は、かなり面白くなかったりします。

どーせやるなら、BBCの2時間ドラマスペシャルぐらいで良いはずです。

まとめ

2017年で俳優を引退してしまう彼。

時に体を張り、時に情熱を持って全身全霊で俳優活動に取り組み、時には作品世界をプロレス的にしてしまう。
この相手を自分の世界に引き込むような腕を持つ事こそ、プロレスラーと言えるでしょう。

しかし、プロレスの世界にはこういう言葉があります。

「never say never」

これが意味するのは「無いという事は無い」ということ「可能性が無いという事は無い」ということ。

つまり、いつか帰って来るのです。
ハリウッドというリングを駆け上がり、四角いマットの上に戻ってくる。
その時は、おそらく来るかもしれないのです。

ダニエル・デイ・ルイス。
彼こそは、ある意味最後のストロングスタイル伝承者なのかも知れません。